交通事故

高齢者の高次脳機能障害|後遺障害等級認定のポイント

高齢者の高次脳機能障害は、認知症や加齢による脳機能の低下と間違われやすいため、ご家族が事故前と比べて変わった様子はないか注意深く観察することが一番のポイントになります。

「ついさっきのことを覚えていない」「話が合わず突然怒り出す」などの症状があれば、その時の周囲の状況も含めてメモをして、医師に画像検査や知能テストを依頼してください。
症状の記録はそれ以降も続けましょう。

ここでは、高齢者が高次脳機能障害となったときの後遺障害等級認定手続について説明します。

1.高次脳機能障害は高齢者だと症状が分かりにくい

「物忘れが激しくなる」「突然怒り出すようになる」「会話が噛み合わなくなる」など、高次脳機能障害の症状は、認知症の症状とかなり似ています。
ですから、高齢者が高次脳機能障害となっても、認知症と間違われやすいのです。

実際、事故のせいで高次脳機能障害だけでなく認知症にもなってしまうこともありますし、認知症でなくても加齢により高次脳機能は衰えていきます。

高次脳機能障害の「症状」、つまり「高次脳機能の低下による日常生活への支障」は目に見えるものではありません。
しかも、誰もが長所と欠点を持ちながら生活しているのですから、症状を把握するには、「事故前」の被害者様の日常生活と比べなければいけないのです。

ところが、医師は専門知識を持っていても事故前の被害者様の生活ぶりは知りません。物忘れや感情のぶれがあっても、年齢のせいだろうと考えてしまうこともあるでしょう。

事故前の被害者の生活の様子をよく知っているご家族が医師に症状を伝えなければ、治療はもちろん、損害賠償請求に必要な証拠・資料を十分にそろえられないのです。

被害者様の様子がおかしいと感じたら、事故に驚いたのだろうなどと軽く見ないでください。
記憶や物事の判断、会話のやり取りや感情表現に違和感を感じたら、そのときの状況をメモして医師に伝え、検査などをしてもらいましょう。

2.後遺障害等級認定の準備

交通事故で後遺症が残ったとき、後遺障害の等級に当たると認定を受けると、治療中の医療費などとは別に後遺症について追加で損害賠償請求をすることができます。

逆に言えば認定を受けられなかったときは、原則として後遺症について損害賠償請求はできません。

高齢者の高次脳機能障害の症状は気付かれにくく、気付いたときには大切な証拠を手に入れられなくなるおそれがあります。
症状がどれだけ重いか明らかにしにくいことも問題です。

損害賠償金額の目安は、症状の重さに応じて認定される「等級」に左右されます。後遺障害等級認定手続の審査機関に症状を正確に報告しなければ、本来認定されるはずのものより低い等級になってしまいかねません。

症状に気付いたらすぐに医師に伝える。
ご家族で症状を具体的に記録し続ける。
さらに認定を受けるうえで大切な画像検査や知能テストも迅速かつ定期的に実施しましょう。

(1) 画像検査

MRI検査をすぐに、そして定期的に実施するよう医師にお願いしてください。

症状の原因は事故による脳神経の損傷であり、加齢や認知症ではないというために最も大切な証拠となります。
しかし、脳神経自体は画像検査に写りません。

事故直後から定期的に精密検査であるMRI検査をすることではじめて、脳が損傷しているとわかることがほとんどです。

MRI検査の中でも被害者様の症状に応じた適切な種類でなければいけないので、症状を具体的に伝えることはここでも大切となります。

(2) 知能テスト

被害者様の症状をよく伝えて、医師が症状に応じた知能テストを迅速かつ継続的に実施できるようにしてください。

知能テストは、高次脳機能の低下それ自体を検査できます。しかし、画像検査ほどの客観性はありません。
テスト結果の信頼性を高めるには、被害者様の症状に合わせて多くの知能テストからいくつかを選び出す必要があります。

そのため、知能テストでも症状を医師に把握してもらえるよう、具体的な説明をしましょう。

また、事故前に知能テストをしているわけではありませんから、テスト結果から医師が症状を判断する上でも、症状の説明は重要となります。

【「症状固定」についての注意点】
症状固定とは、症状がそれ以上回復しなくなることを言います。一般的には、症状固定のときに残っている症状が「後遺症」であり、後遺障害等級認定手続の審査は症状固定のときの症状を対象として行われます。
症状固定の時期は、裁判でずれる可能性はありますが、基本的に医師の診断に基づいて決まります。
ところが、高齢者の場合、審査機関が考える症状固定の時期が、医師が診断した時期よりも後ろ倒しになることがあるのです。
高齢者は認知症と区別がつきにくく、認知症でなくてもどうしても歳を取るにつれ高次脳機能が低下していきますから、症状固定の判断に慎重になっているのです。もっとも、その間に症状が悪くなっていても、交通事故による高次脳機能障害の影響が加齢の影響を超えていることが明らかだと言えない限り、より高い等級に認定されることは難しくなっています。

3.認定のための必要書類

高齢者は症状固定の時期の判断が難しく、また、いつの症状を基準に審査がされるかあいまいなところがあります。
しかし、だからこそ、治療中に準備をできる限りしておくべきでしょう。

高次脳機能障害の必要書類は他の後遺障害より多く、特殊な認定システムがあることや日常生活の支障が問題となることから、他の後遺障害の手続ではさほど重視されない資料がポイントになることもあります。

被害者様の様子の観察と記録、医師など医療関係者との情報共有、精密検査を早くから定期的にする、という3点を心がけてください。

(1) 後遺障害診断書

後遺障害診断書は手続で最も大切な書類です。
手続専用の特別な診断書で、医師が診断名や治療経過、症状の推移など、認定のポイントとなることをまとめます。

高次脳機能障害の認定手続では、一定の条件を満たさなければ、「高次脳機能障害として」後遺障害の審査をしてもらえません。

後遺障害診断書はその条件の一つになっています。高次脳機能障害に関わる診断がされていれば、審査を受けることができます。

もっとも、認定を受けられるかは別の話です。認定のためには、検査結果の評価など後遺障害診断書の内容を充実させることが大切です。

医師はそれまでの診断や検査、被害者様やそのご家族などからの情報をもとに後遺障害診断書を作成します。
治療中に医師に症状を説明し続けることは、とても重要なのです。

(2) 経過診断書

医師は保険会社に毎月治療経過を報告する「経過診断書」を送付しています。

経過診断書は後遺障害診断書と並ぶ審査条件です。
頭部外傷や画像検査結果など高次脳機能障害を疑わせる事情が経過診断書に記載されていれば、高次脳機能障害として審査される可能性があります。

初期から定期的に作成されますから、事故直後症状に気付いたらすぐに医師に伝えなければ、経過診断書に高次脳機能障害を疑わせる事情を記載してもらえないおそれがあります。

(3) 日常生活状況報告書

日常生活状況報告書はご家族など周囲の方が日常生活の支障を審査機関に報告する書類です。

症状に気付いたときから被害者様の症状を記録し続けましょう。
その記録は日常生活状況報告書の下敷きとなります。

審査機関が作成している書式では症状を記載するためには不十分なため、別紙に報告書を添付することになるでしょう。

障害による日常生活の支障は、いつごろ・どんな状況で・誰と・どのようなやり取りをしたのかなどを明らかにすることで分かりやすくなります。

被害者様の言動だけでなく、一日を通しての生活リズムや周囲のサポートなどの周囲の状況も含めて、メモを取ってください。

[参考記事]

高次脳機能障害の等級基準|等級獲得には日常生活状況報告書が重要

(4) 神経系統の障害に関する医学的意見

医師が被害者様の症状について審査機関に報告する書類です。

繰り返しますが、医師は被害者様の症状が分かりません。ですが、専門家が作成した書類として審査機関は重視しますから、その内容が正確になるように、日常生活状況報告書を使って丁寧に症状を説明しましょう。

(5) 看護記録やリハビリ記録

高次脳機能障害は「被害者様に触れる時間が長いほど症状が分かる」という性質がありますから、医師よりも長い時間被害者様に接することになる看護師やリハビリの専門職が作成した看護記録やリハビリ記録も証拠になることがあります。

入院中は看護師と、リハビリが始まったらリハビリの専門職の方と、症状についてよく話して認識をすり合わせてください。

4.まとめ

高次脳機能障害は日常生活に大きな問題を引き起こします。

被害者様ご本人が自覚できないことも多く、周囲の皆様も巻き込んで多大な悪影響が生じるおそれがあるのですから、後遺障害等級認定を受けて適切な損害賠償金を受け取ることはとても大切です。

しかし、もとより高次脳機能障害の後遺障害等級認定・損害賠償請求は非常に難しいもの。

まして高齢者の方となると、どうしても加齢や認知症の影響、診断ミスなどのおそれがあります。症状を医師はもちろんご家族が正確に把握し、審査機関に説得力ある報告をすることはなかなかできないものです。

些細な違和感を見逃さず、すぐにその時の状況も合わせて医師に報告し、MRI検査や知能テストを始めましょう。
ご家族も症状のメモを続け、申請時の日常尾生活状況報告書の作成に備えてください。

実際にどのような点に気を付ければよいのかわからない、医師が症状を軽く見ているように思える、見通しが分からない…。
そんな不安があれば、ぜひ弁護士にご相談ください。

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