スマホのキャリア決済を現金化してしまったときに自己破産するには
「今現在お金はないけれど、キャリア決済で現金化したギフト券をネットで業者に売れば現金を手に入れるし、これで借金の返済ができる!」
そう考えつく方もいらっしゃるでしょう。
キャリア決済の現金化そのものは、確かに違法ではありません。しかし、通信会社との規約で禁止されています。
何より、キャリア決済を現金化すると、自己破産ができなくなるリスクがあります。
ここでは、キャリア決済の現金化をしてしまった方が自己破産をする場合について、分かりやすく説明しましょう。
このコラムの目次
1.キャリア決済の現金化は、「免責不許可事由」
キャリア決済の現金化とは、Amazonギフト、itunesギフト、Googleplayギフトなどのギフト券を、通信会社の決済サービスであるキャリア決済で購入し、金券ショップなどの業者に買い取ってもらって現金を手に入れることを言います。
キャリア決済の現金化は、自己破産をするには不適切な事情である「免責不許可事由」となってしまい、自己破産できなくなるリスクや、手続の負担が増えるおそれがあります。
(1) キャリア決済について
キャリア決済は、一時的に通信会社に代金を肩代わりしてもらい、その代金を通信料金とあわせて支払うものです。大手の通信キャリアは、「ケータイ払い」「かんたん決済」「まとめて支払」などの名称で、キャリア決済サービスを展開しています。
キャリア決済の現金化は、ギフト券をキャリア決済で購入して売り払うことで、品物やサービスではなく現金を手に入れる行為というわけです。
確かに、スマホさえあれば、キャッシングやカードローンに申し込むことなく現金を手にできます。ネットでも多くの業者がサービスを展開しているため、気軽に利用できてしまいます。
キャリア決済サービスは、利用上限額が低いため審査がなく、翌月の通信料と合算してすぐに請求されるので利息や分割返済の問題もありません。携帯電話の通信契約さえしていれば、簡単に利用できます。
しかし、そもそも、キャリア決済は、あくまで代金の支払いサービスです。そのサービスを借金するための手段に使うキャリア決済の現金化は、通信会社が規約で禁止していますから、発覚すれば契約解約のおそれがあります。
そして、キャリア決済自体も借金と似たようなものです。決済をしてから翌月に通信料金と一緒に支払いをするまで、キャリア決済を利用した人は、借金の返済義務と同じような「金銭支払義務」、つまり債務を通信会社に対して負うからです。
(2) キャリア決済の現金化と免責不許可事由
自己破産を申し立てれば、必ず借金が無くなるとは限りません。免責不許可事由に当たる事情があると、借金が無くならない可能性が生まれます。
たとえば、浪費やギャンブルなどによる借金が代表例ですが、その他にも法律で様々な行為や事情が免責不許可事由になっています。
そして、キャリア決済の現金化は、免責不許可事由である「信用取引により買い入れた商品を著しく不利益な条件で処分したこと」にあたります。
信用取引とは、モノやサービスを手に入れた人に代わり、その代金を将来支払ってもらえると信用した人が肩代わりして支払い、あとで肩代わりしたお金を支払ってもらうという取引のことです。クレジットカードでの支払いが典型例ですが、スマホのキャリア決済も、その仕組み上、信用取引に当たります。
そして、キャリア決済で手に入れたギフト券を処分、つまり、業者に買い取ってもらって手に入れられる現金は、元のギフト券の金額の8割程度いけばいいほうです。
現金を手に入れるために2割も損をしてギフト券を売却する。これが、「著しく不利益な条件で処分したこと」に当たります。
このようなことをすると、自己破産をする人が持つ財産が減ってしまいます。
自己破産では、借金を帳消しにする代わりに、債権者に財産が配当されることがあります。配当のもととなる財産を、現金欲しさに減らしてしまったのですから、債権者への配当を減らしたとして、免責不許可事由になってしまうおそれがあるのです。
2.免責不許可事由があると手続の負担が増える
裁判所は、免責不許可事由がある人の自己破産手続を、「管財事件」という種類のもので行います。
管財事件では、「破産管財人」という手続の監督役が選任されるため、手続の費用や手間が増えてしまいます。
(1) 借金をなくすための費用が30万円は増える
自己破産をするには、手続の代理人となる弁護士に着手金など報酬を支払ったうえで、裁判費用などを支払う必要があります。
破産管財人が選任されない「同時廃止」と比べて、管財事件ではトータルの費用が30万円ほど増えてしまうのです。
破産管財人の報酬
管財事件では、ほとんどの裁判所において、申立ての時に一括で破産管財人の報酬を前払いすることになります。この前払いされる報酬は「報酬予納金」と呼ばれています。
破産管財人の報酬は、少なくとも20万円は必要です。
同時廃止であれば、裁判所に支払う手続費用数万円だけで足りますが、管財事件では、それにこの20万円がさらに上乗せされてしまいます。
報酬予納金は、最大50万円になることもあります。
弁護士費用
管財事件になると、弁護士へ支払う着手金など報酬も、同時廃止に比べて相場が10万円は上がります。
具体的な金額は弁護士次第ではありますが、いずれにせよ、管財事件では、同時廃止では選任されない破産管財人に対して弁護士が対応する必要があるなど、仕事の量が増えてしまいますので、報酬の増額は避けられません。
(2) 破産管財人に対応する手間が増える
破産管財人とは、少なくとも1回、面接をすることになります。どうして破産することになったのか、これから生活を立て直せるのかを根掘り葉掘り聞かれることでしょう。
弁護士が同席していればフォローすることはできますが、心理的負担はどうしても生じます。
破産管財人は、後で説明する通り、免責不許可事由があっても借金をなくすべきかの意見を裁判所に報告する役割を持っています。
破産管財人に対してウソをついたり、ごまかしたりすることは厳禁です。
破産管財人に関わらず、手続に関する説明や資料でウソをつくことなども免責不許可事由になります。
さらに、破産管財人は、
- 郵便物の中身を空けてチェックする
- 家や車などの財産の資産価値を計算し直す
- 隠し口座がないか銀行に照会する
などの強力な調査権限を持っています。
また、裁判所による引っ越しや長期出張の事前許可・自由財産(生活のため配当されない財産のこと)をより多くする許可などについても、破産管財人は意見を出します。
破産管財人への対応は丁寧で堅実に、印象を損なわないように細心の注意が必要です。
裁判所は配当できる財産があるときにも管財事件にします。もちろん、もとからキャリア決済の現金化以外の免責不許可事由がある場合にもです。
免責不許可事由があるのに借金をなくしてもらうには、裁判所に「裁量免責」を認めてもらうため、反省していることを示す必要があります。
3.自己破産を成功させるために
「裁量免責」とは、裁判所が、免責不許可事由がある人のあらゆる事情を総合考慮して、借金の免除を認めることです。裁判所は、破産管財人が債務者について調査した報告書をもとに裁量免責すべきか判断します。
ほとんどの人は、免責不許可事由があっても裁量免責により借金をなくしてもらっています。
しかし、あまりに悪質な免責不許可事由がある場合や、借金をしたことや免責不許可事由をしてしまったことを反省していない場合は、裁量免責されず、本当に借金が無くならないまま手続が終わってしまうことがあるのです。
ですから、手続中は真摯な態度で正直に破産管財人や裁判所に対応することが不可欠となります。
キャリア決済の現金化をした方が裁量免責されないとすれば、以下のようなケースが考えられます。
- 弁護士に相談したあとにキャリア決済及びその現金化をして浪費をした場合
- キャリア決済の現金化やその使い道についてウソをつくなど、態度に反省が見られない
- 指示された日までに必要書類を提出しない
- 破産管財人との面談でドタキャン・遅刻
裁量免責されるためには、とにもかくにも「真摯な態度」。これにつきます。
破産管財人から尋ねられた借金の使い道やキャリア決済など免責不許可事由の内容は正直に話す。裁判所や破産管財人から指示されたことは、面倒でも素早く丁寧にこなす。
そうすることで、破産管財人や裁判所に、「本当に反省しているんだな」と認めてもらえるでしょう。
4.借金問題は泉総合法律事務所八千代勝田台支店へご相談下さい
キャリア決済の現金化は、キャリア決済サービスが非常に便利なこともあって、借金で首が回らなくなった方がつい手を出してしまうことがあります。
しかし、キャリア決済の現金化は、自己破産できないリスクや負担の増大をもたらすのです。
とはいえ、裁量免責による自己破産の道は残されています。法律の専門家である弁護士のサポートに従って、破産管財人や裁判所に反省していることが確実に伝わるように行動すれば、キャリア決済の現金化をしてしまった後でも、借金をなくすことができる可能性はあるのです。
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