債務整理

個人再生手続の注意点|国民健康保険料、年金、税金の支払い

個人再生手続の注意点|国民健康保険料、年金、税金の支払い

個人再生手続をしても、滞納している国民健康保険料や年金、税金の支払義務は免除されません。
支払う金額は減らず、分割払いにもなりません。手続中ですら、税務署や役所などは給料などを差し押さえられます。

そうなってしまえば、裁判所は、個人再生で他の支払負担を減らしても意味がないとして、手続を認めないでしょう。

国民健康保険料、年金、税金の支払いに関しては、それぞれの公的な支払い制度に応じて、適切な対処をしなければいけません。

ここでは、税金などは個人再生のどのような効果を受けないのか、税金などを滞納しているとどうなってしまうのか、滞納している税金などに対処して個人再生を成功させる方法を、分かりやすく説明します。

1.個人再生をしても減額・免除されない債務

個人再生手続では、法律で普通の借金などよりも取り立てが優先されているお金の支払義務(「一般優先債権」といいます)については、手続の対象外となっています。

そして、国民健康保険料や年金、税金は、法律により最優先で回収することが許された、一般優先債権の代表例なのです。

本来、個人再生手続では、借金返済などのお金の支払いについては、

  • 手続が始まれば、支払いをしないでよくなり、また、差し押さえもされなくなる
  • 再生計画が認可されれば、返済額が減ったうえ分割払いになる
  • 分割払いを終えれば、残る借金が免除される

ことになります。

しかし、税金などは、この3つの効力が全く及ばないのです。

ふつう、裁判所が個人再生の手続を開始すると決定したあとは、いったん支払いは禁止されます。
裁判所を利用して借金を整理するときは、基本的に一部の債権者にだけ借金の回収を許すような不平等な扱いをすることは許されないという「債権者平等の原則」に基づき、手続が行われるからです。

ところが、税金など一般優先債権は、債権者平等の原則の例外となりますから、手続中でも、請求があれば支払わなければいけません。

しかも、税金などについては、裁判所の命令で差し押さえを中止または取り消すこともできません。
ですから、税務署や役所などは、手続が始まったあとでも、未払いの税金を債務者から強制的に回収できるのです。

また、税金など一般優先債権は、債務者が作成した分割払いの計画である「再生計画」の案にも組み込まれません。
少なくとも、個人再生手続だけでは、金額が減ることもなければ、分割払いにもなりません。

再生計画に組み込まれた借金は、再生計画に従った支払いを終えれば、残りは免除されます。
つまり、税金などは一円も免除されないのです。

なお、自己破産でも、税金などは無くなりません。

【税金の滞納処分と延滞金】
税金などを滞納していると、裁判所を通さずに、税務署や役所などが、直接、預貯金や給料を差し押さえてしまいます。これは、「滞納処分」と言って、税金など公的なお金の支払の回収には、強力な権限が与えられているのです。
また、延滞金も大きな問題です。税金などを滞納すると、延滞税など延滞金が上乗せされてしまいます。滞納期間が長ければ、その税率は10%近くにもなります。
対処をしなければ、膨れ上がった滞納を一括で解消しろと要求されてしまいますから、なおさら多くの財産を失ってしまうおそれがあります。

2.税金の滞納と個人再生の失敗リスク

個人再生は税金などの負担を減らせないとしても、サラ金からの借金や奨学金など、ほとんどの支払義務を減らせることに変わりはありません。

ただし、税金などについてしっかりとした対処をしておかなければ、個人再生が失敗してしまうおそれがあります。

(1) 滞納処分のせいで計画通りの支払ができない

個人再生に成功して支払負担軽減が確定するときは、手続を申し立てた時でも、裁判所が再生計画案を認可した時でもありません。再生計画通りの支払いを終えたときです。

支払いが遅れれば、借金が復活するおそれがあります。

滞納処分を支払い途中でされてしまえば、計画通りの返済ができなくなってしまう可能性は高いでしょう。

(2) そもそも再生計画を認めてもらえない

滞納処分がされてしまえば、財産が一気に減少してしまいます。

再生計画が認可される条件、その中でも最も重要なものが、「計画通りの支払いをできるだけの収入や財産があるか」すなわち「再生計画の履行可能性」です。

滞納処分で役所などに預貯金や給料を差し押さえられてしまうと、裁判所は再生計画の履行可能性がなさそうだと判断してしまいます。

再生計画案を認可してもらえず、個人再生は失敗。税金など一般優先債権以外の借金も全く負担が減らないという結果に終わるおそれがあります。

しかも、手続を始めるかどうかの段階でも、再生計画の履行可能性が「ある程度」あることが必要です。
手続開始前に高額の滞納した税金をなにも対処せずに放置していると、裁判所が手続をはじめてくれないこともあり得ます。

3.滞納税金などの負担を減らす方法

個人再生、もっといえば、どんな債務整理手続でも負担を減らせない税金などの滞納。
放っておくと、他の借金などを整理しても意味がない、個人再生自体ができないという事態に陥ります。

どう対処すればよいのでしょうか。

他の借金などの取立ては、弁護士が受任通知を送った段階でストップします。その返済に充てていたお金で滞納をなくせるのならそれに越したことはありません。

しかし、手続費用の積み立ても必要ですし、滞納額があまりにも多ければ、返しきる前に役所が滞納処分に踏み切るおそれもあります。

最適で現実的な対処法は、滞納している支払いに関係する役所に連絡を取り、直接、負担の軽減を探ることです。

(1) 滞納している支払いごとの対処法

①健康保険

健康保険には、保険料の減額や免除、支払猶予の制度があります。制度が利用できるか、担当者に確認してください。

その際には、個人再生の申し立てを弁護士に依頼するほどお金に困っていること・個人再生をすることで、将来、保険料をちゃんと支払える見込みがあることも伝えましょう。

どのような場合にどのような制度が利用できるのかは、加入している健康保険組合や国民健康保険を所轄する市町村次第で異なります。
まずはあなたが加入している健康保険組合などに電話をするか、直接窓口に行きましょう。

滞納が長引くと、滞納処分による悪影響はもちろん、健康保険が使えなくなってしまうおそれもあります。出来る限り早く行動を起こしてください。

②年金

年金の保険料も、減額や免除、猶予制度があります。

日本年金機構など、加入先の年金に対して確認・相談をしましょう。

③税金

残念ながら、基本的に税金は免除されないと考えてください。

生活保護を受けている方や収入が非常に少ない方ならともかく、個人再生は一部とはいえ借金を返済することを前提とした債務整理手続です。

個人再生をする方が税金の免除を受けられる可能性は非常に低いでしょう。役所も免除にはとても消極的です。

免除はだめでも、分割での納付には応じてくれる可能性は十分あります。
税金の分割払いは「分納」と呼ばれています。

分納の期間には法律上制限があり、また、支払総額を減らすものではありません。
それでも、分割払いにすることで、支払いができずに滞納処分をされてしまうリスクを大きく下げることができます。

月々いくら、何か月間で支払うか、そもそも分納を許してくれるかは、役所の担当者の態度、債務者の収入などの具体的事情次第ですが、ともかく役所に足を運んでみましょう。

(2) 分納、減免、猶予の後は裁判所に報告

無事、滞納している税金などの分納や減免、猶予をすることができたら、その結果・内容を陳述書にして、裁判所に提出しましょう。
陳述書は、たいてい、申立てのときに、申立書と一緒に提出します。

滞納している税金があるけど、滞納処分をされてしまったら借金を減らしてもどうしようもないんじゃないかなぁ…そんな裁判所の不安を、滞納した税金などの負担を減らせたと報告することで打ち消すのです。

あとは、再生計画の履行可能性など、それ以外の条件をクリアすることで、個人再生による税金など以外の支払負担の軽減、免除への道が開けます。

4.個人再生手続は泉総合法律事務所八千代勝田台支店へご相談下さい

国民健康保険料や年金の保険料、税金は、個人再生手続では支払総額が減らず、分割にすることもできません。
滞納処分により手続中であろうが、再生計画の支払中であろうが、一気に財産を奪われてしまいます。

滞納した税金などがそのままでは、個人再生も失敗してしまい、他の借金も減らないでしょう。

健康保険や年金なら減免や支払い猶予、税金なら分納により、支払い負担を減らせる可能性はあります。
しっかりとした対処をすることで、税金などの負担軽減に加え、個人再生を成功させられるようになります

しかし、その交渉や計画遂行が可能であることを裁判所に対して陳述書で説得するのは、専門的な知識や経験が不可欠であり、一般の方には非常に難しいと言えます。

税金などの支払いにも困るようになったら、その延滞金が積み重ならないうちに、少しでも早く泉総合法律事務所八千代勝田台支店へご相談下さい。

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