借金の消滅時効について|その請求書はもう支払わなくてもいい?
「昔お金を借りていたけれど、ずいぶん後になって請求書が届いた……」
このような場合、消滅時効が成立し、支払わなくてもよい場合があります。
ここでは、どのような場合に消滅時効が成立し、支払わなくてもよいか解説していきます。
このコラムの目次
1.消滅時効とは?
このような会社からの貸金や立替金などの会社からの請求は、「商行為によって生じた債権」とされ、5年間行使しなければ、消滅時効が成立します。
なお、法律の改正がなされ、平成32年6月からは、このように定めた商法522条は削除され、新しく民法166条1項1号で5年間行使しないときは時効によって消滅すると定められることになります。
適用条文は変わりますが「5年の消滅時効」という点についての結論は変わりません。
2.時効の利益を受ける意思表示(時効の援用)
5年間行使しなければ、消滅時効が成立します。
しかし、この消滅時効の効果を受けるには、時効の利益を受ける意思表示、つまり時効の援用を行わなければなりません。
法は時効の利益を受けるかどうかはもっぱら当事者の任意としており、ただ時間が経過するだけでは、時効により債権が消滅する効果は確定しないという建前としております。
3.信用情報の回復
このように消滅時効が成立していても、返済を行っていない場合、信用情報に乗り続けている場合があります。
そうすると、新しくクレジットカードを作成したり、ローンを組んだり、保証人となる際の審査に通りにくくなっていることがあります。
しかし、消滅時効の援用を行うことで、そもそも債務が消滅するのですから、債務の延滞という事実はなくなりますので、信用情報の登録も抹消されるべきことになります。
そこで時効の援用とともに信用情報に掲載がある場合には抹消することを求めることもできます。
4.消滅時効が成立しない場合
(1) 返済
借り入れなどの返済を行った場合、その債務を承認しているものと考えられますので、最後の返済がなされた日から5年経過しないと消滅時効は成立しません。
(2) 承認
業者に対して、「…の債務があることを承認します」などの、債務の存在を認める書面を書いていたような場合や、「…の債務は●月×日から毎月〇円ずつ返済します」などといった債務の存在を認めたうえで、返済の約束をしていたような場合、これは「承認」といって、時効の中断事由に該当します。
そのためこのような「承認」を行ってから5年間経過しないと消滅時効は成立しないということになります。
(3) 請求
訴訟の提起など裁判所を通して、請求してくる場合、それは時効の中断事由の「請求」に該当します。そのため、5年間経過しないうちにこのような「請求」がなされれば、消滅時効は成立しません。
業者がただ普通の郵便で請求書を送りつけてくるだけの場合は「請求」には当たりません。
なお内容証明郵便などで、支払の催告をしてくる場合は、これだけでは消滅時効は中断しませんが、催告を行った6か月後に訴訟の提起などの「請求」を行った場合は、最初の催告の時点で時効は中断していたことになります。
(4) 差押え
公正証書などで契約書が作成されている場合で執行受諾文言が付されているときなど、財産の差し押さえなどの強制執行をすることができる場合があります。
この差押えも消滅時効の中断事由となっておりますので、これがなされた場合も消滅時効が成立しなくなります。
5.泉総合法律事務所へご相談下さい
このように、ずいぶん前に借りたような気がするけれど、5年以上返済していない場合は、消滅時効が成立しているかもしれません。
もっとも、知らないうちに訴訟を提起されていたりする場合もあるかもしれません。
例えば、裁判所から訴状が送達されていたにもかかわらず、受け取らなかったため、受け取ったものと法的にみなされて訴訟手続が進み、判決がなされていた場合や、訴状を受け取ったけれど、ずいぶん前のことだったので忘れてしまっていたこともあるかもしれません。
このような場合は、消滅時効を援用しても認められませんが、債権者である業者がこのような消滅時効対策を取っていない場合は、消滅時効の援用が認められ、業者からの請求に対して返済していく必要がなくなります。
そこで消滅時効の援用を自分自身で業者に対して、行うことも十分可能です。
その場合は、時効の援用を間違いなく行った証拠が残るという点で内容証明郵便によって行うことをお勧めいたします。
もっとも業者からの請求金額が大きい場合や時効の援用といっても何を書けばよく分からないという場合などは、多少費用はかかるかもしれませんが、専門家にお願いすることを考えてもよいかも知れません。
借金の時効については、泉総合法律事務所へご相談下さい。
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