自己破産に回数制限はある?|2回目も3回目も認められるか
多額の借金をしてしまい、どう努力しても自力で返済できる見込みがない…。
このような方を救う国の救済手段として、自己破産という制度があります。
自己破産とは、裁判所での手続きを通じて、残っている債務を免除してもらう手続きのことをいいます。
債務整理は最後の救済手段ではあるべきなのですが、一度自己破産手続きなどの債務整理をして借金をなくしても、残念ながら再び借金をつくって自己破産をしなければどうにもならなくなってしまう方もなかにはいらっしゃいます。
会社をリストラされてしまう場合もあるでしょうし、さまざまなサービスが手軽に利用できる現代社会において株やFXなどレバレッジが効く金融商品で投資に失敗してしまったり、気軽に連帯保証人になってしまったところ主たる債務者が思いがけず返済不能になり自分に返済請求がきてしまったり、消費者金融で高額の借金をしてしまったり、というような落とし穴に、繰り返しはまってしまう可能性もあります。
自己破産制度による借金の免除を、過去すでに利用したことがある債務者が、再び別の借金を作った場合、もう一度自己破産制度を利用することは可能なのでしょうか?
この記事では、自己破産に回数制限があるのかということについて説明します。
1.破産と免責
自己破産とは、借金を負う債務者が裁判所に対して破産と免責を申し立て、申し立てを受けた裁判所が、申立人に具体的な収入がどの程度あるかということと借金の額を考慮して、本当に支払い不能状態であるかどうかを判断し、破産手続開始決定と免責決定をする手続きです。
裁判所が、債務者がその借金について支払不能状態であると判断した場合、まず、破産手続開始の決定をします。
たとえば、借金の額が大きくても入ってくる収入も大きい場合は、借金を返済していくことは可能ですし、ほぼ無収入の人であれば、一定の金額以上はもはや支払は不能ということも有り得ます。
画一的な基準があるわけではないため、裁判所が個別具体的に判断していくのです。
こうして、まず破産手続き開始の決定ののち、さらに裁判所の審査の上、免責許可が与えられれば、借金の返済義務はなくなります。免責許可の決定には数ヶ月かかることもあります。
借金を帳消しにすることは、日本のような資本主義社会においては特例です。また、債務者が破産した債務者から返済してもらえるという正当な権利を犠牲にしてまで免責をして、債務を免除するべきかどうかは、裁判所により、それが妥当なのかを審査されます。
具体的には、破産者に尋問をしたり、陳述書の提出を受けたりして、破産者が返済できない借金をつくったことを深く反省しているのか、借金の原因はある程度やむをえないものだったのかという情状などを踏まえて、免責を認めることが妥当と思われる場合にのみ許可がなされます。
なお、免責は申立人の責任のみを免除するものですので、連帯保証人がいる場合、連帯保証人の債務は免責されません。
大切なご家族や友人に連帯保証人になってもらっているという場合は、自己破産手続きの利用は、くれぐれも慎重に行いましょう。
2.自己破産を複数回することは可能か
結論からいいますと、法律上は自己破産に回数制限はありません。
したがって、2度目以降であっても、破産手続き開始や免責の申し立てをすることは可能ですし、裁判所がもう一度免責を認めることが妥当だと判断すれば、免責による借金の免除を受けることができます。
ただし、期間的に制限があります。前回の免責を受けてから7年間は、新たに免責を受けることはできません。
このような期間を設けずに無制限に免責を認めていては、借金をつくっては自己破産を繰り返す債務者が増え、まっとうに借金を返そうとしない人がでてくることになります。
また、自己破産は債権者にとっても非常に酷な結果となりますので、今後、融資をしようとする人がいなくなり、結果経済が回らなくなるかもしれません。
そのため、破産法は、252条第1項によって免責不許可事由を定めていて、これに該当するような不誠実な債務者に対しては、裁判所は免責を許可しないこととしています。
上記の期間的な制限、つまり前回の免責決定から7年以内の新たな免責は認められない、という定めも、この免責不許可事由のひとつになります。
期間的な制限のほか、免責不許可事由には、ギャンブルや浪費などで借金をした場合や、破産法に違反し裁判所の指示に従わない場合、債権者を害する行為(財産隠しなど)をした場合も含まれます。
3.2回目以降の自己破産申請の注意点
上記のように、破産法上自己破産ができる回数そのものには制限はないので、前回の免責決定から7年間経過している場合は、2回目以降も申請することができます。
しかしながら、免責決定は借金の返済ができないことを深く反省している人に対して認められるものですので、2回目以降は一般的には1回目より裁判所の目が厳しくなりがちです。
具体的にいうと、1回目とは別の理由であるほうが認められやすい傾向はあります。
例えば、1回目は、不況による会社のリストラにより収入がとだえてしまった、2回目は恩人の連帯保証人になり自分が借金を返すことになってしまった、などという場合があります。
裁判官に、2回目の免責についても妥当だ、やむをえない事情だという心証をもってもらうことが大切なのです。
4.まとめ
2回目以降の場合や、免責不許可事由に該当する心配がある方は、早めに弁護士などに相談してみることをおすすめします。
同じ状況であっても、状況証拠の出し方や、反省の状況をいかに伝えるかどうかで結果が違うことが考えられます。
債務整理に詳しい弁護士であれば、こういった申請や過去の裁判事例にも精通していますので、裁判所の説得に長けていることが期待できます。
自己破産により、これまでを省み、人生をやり直すことができます。借金で悩まれている方は是非一度、泉総合法律事務所の弁護士に相談してみてください。
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